世界のつくりかた

1.はじめに
脚本と演劇の違いは何か?
脚本がデッサンだとしたら、演劇は油絵なり完成した絵である。
読ませるメディアとしての戯曲には意味があるとは思うが、
脚本以上の意味と現実性をもたせなければ、演劇の意味は薄い。

2.目的
役者の創造性は脚本に書かれていない事を付加する事である。
しかし当然、全く違う事を付加する訳ではない。

それでは何を付加するのか?
人間関係を中心に舞台の上で世界を構築する。 その中での登場人物が言うのに
ふさわしいセリフが、その脚本のセリフになるように、世界を構築する。
それが役者の仕事。(ひいては演出家の仕事)

つまり、1+2という問題(原因)を与えられて3と言う答え(結果)を作り出すのではない。
3という結果から1+2という原因を作り出すわけだ。
当然、0+3という原因や5-2という原因、様々な原因がありうる。
この原因を考え出して演技をする、これが世界を作る、という事になる。

3.具体例
父:おはよう
娘:・・・
父:ハハハ・・・、今日は早いな、ハハハ・・・、朝起きてくるなんて、パパびっくりしちゃった、ハハハ・・・
娘:うぜえんだよ!

ここには書かれていないが、セリフから状況が大体つかめるはず。

①概要の解釈
父は娘を愛しているが、遠慮している。
娘は反抗期
もしかして母はいない。(離婚?死別?たまたま?)
時刻は朝、場所は家のダイニング(かな?)

②詳細な解釈
さて次にこの概要に肉付けをしてみよう。 しかし、より進んだ肉付けだから、ここからは
様々な人が様々な解釈をする事になる。
なので、解釈というより、ほぼ想像、妄想の作業になる。

例1:
母は死別。 昔は娘は父を慕っていたが、母の死の原因が父にあると思っている娘は、逆に父を嫌うようになった。

例2:
母はキャリアウーマンで高給取り。父は職が無くて家で居場所が無い。娘はただ父を馬鹿にしている。

例3:
父は実は父親に化けた宇宙人。 地球人の娘に取り入ろうと、いつもご機嫌を伺うが宇宙人なので間合いを取るのがド下手。
娘は急に変わってしまった父をいぶかしんで、化けの皮をはがそうとしている。

4.世界を作る意味
上記例は短すぎるので、さまざまな解釈ができてしまうが、普通の脚本はこのように短い事はない。
だから脚本全体を読んで、概要の解釈を行い、その後に詳細な解釈をする事になる。

詳細な解釈は、読み手の勝手な妄想の割合が多いので、10人読んだら10人違う解釈となる場合もある。
しかし、この解釈に基づいて役者は演技を行う。まずはそれが大事。

また、同時に、芝居の最初の素読みの段階、もしくは練習の課程でこの解釈をすり合わせていく必要がある。
でなければ、同じ世界で芝居はできないから。

芝居の練習をする、という行為は決められた演技をする、という事よりも、上記のように
物語を解釈してキャストスタッフが1つの共通な世界を作る、という創造的な作業の方が多い。


  • 最終更新:2014-05-26 23:16:09

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