さりげないシーンの注意点

さりげないシーンの演技は、盛り上がるシーンとは別の注意が必要である。

役者は基本的には自分の感情や立場を想像して演技する訳だが、そのためには想像力を
働かせるための元となる物があった方がやりやすい。 
盛り上がるシーンでは声高にテーマや感情を語る事ができるため、気持ちも入れやすく
また、セリフの中にそのままテーマや感情が入っているので、役に感情移入しやすい。
しかし、さりげないシーンにおいては、会話=セリフ自体に役としての感情や
主張、自分の立ち位置が書かれてる事が少ない。 
という事は、さりげ無いシーンでは、役者は自分がどう感じているか、相手のセリフに
ついて、どう対応すべきか、という想像を、より努力して行う必要がある。
だから、盛り上がるシーンのように直近のセリフだけではなく、前後のより
長い時間スパンでの自分や相手の感情の動きを良く読み込んで、その時にどう考えて
どういう理由でそのセリフを言っているのか、を考える必要がある。
つまり脚本を深く読み込まなければ演技ができない。
もし、それをやらずにさりげないシーンを行ったとすれば、ただリアリティの無い、
シーンになってしまう。
しかし、芝居のなかで、さりげないシーンがしっかりリアリティをもって造りこまれて
いなければ、観客は役者に感情移入しにくい。 観客の多くは日常生活のテンションを
持って芝居を見に来る。 その日常と同化したさりげないシーンで観客の心をつかみ、
役者に感情移入してもらう。 そうすれば、クライマックスにおいて、気持ちや
テーマの主張を行う際に、観客は役者と共に盛大なクライマックスを味わう事ができる。

このようにさりげないシーンは重要であり、しかも注意が必要であるので、
逆説的ではあるが、さりげないシーンは全力でさりげなく演じる必要がある。

さりげない演技の時は、歩行は控えめにし、目線移動、顔だけの向き変え、
ボディ全体で向き変え、相手のセリフにうなずく、うなずかない、及び、
それらの速度とタイミング制御を中心にしておき、動きがうるさすぎないようにする。


  • 最終更新:2014-03-31 23:34:32

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